みんなでつくる高尾山・京王高尾線周辺エリアガイド

<中山製畳店>
椚田遺跡公園通り、地元の多くの人々が「高専通り」と呼ぶ大通りに、畳のベンチがあるのをご存知だろうか。





そこには明治32年創業の老舗畳店がある。中山製畳店だ。4代目店主の中山光敏さんはこの道31年、職人として油の乗った年齢を迎え、父親と共に毎日イグサの香りに包まれて仕事に励んでいる。
ご自宅に和室のある読者はどれくらいの数だろう。そんな疑問を持ちながら取材を進めたのだが、兎にも角にも中山さんの知識と経験はひとつひとつに自信が溢れていた。

<畳表・イグサ>
近年は住宅事情の変化に伴い、薄く軽い畳も多くなってきているが、藁床(わらどこ)の京畳で一級品ともなれば一畳(191.0×95.5㎝)の重さは40㎏を超えるそうだ。畳表に使われるイグサ、これにもやはり中国産の物があり、日本産のイグサと比べると持ちが悪く香りも少ないが日本産のイグサはほんのり甘く優しい香りである。
アトピーやアレルギーに応じてビニール系や和紙素材を使った畳表の仕事も請け負う。ビニールと聞くと安価なイメージを持ってしまうが、価格は国産畳表の中級品と変わらず、中山製畳店では質や持ちが悪いと分かっている仕事についてはプライドを持って丁寧にお断りする。それについて語る中山さんの目の奥にはしっかりとした自信が満ち溢れていた。
また、「モダン乱敷き畳」と呼ばれる物も取り入れ、施主の好みの畳表やヘリのデザインだけではなく、畳の敷き方もこれまでの一般的な敷き方以外から自由に選ぶ事が出来る。施工した写真を拝見したが、まさに「モダン」に「乱」れて敷いてあるのだ。畳を一松文様に敷いたり、畳半畳分ずつずらして部屋が広く感じられるような敷き方もある。畳表は、紺、薄ピンク、ベージュや黒、他にもまだまだ選ぶ事が出来る。これは選ぶ楽しさがかなり幅広くなる。


<和室と末永く>
続いては、畳のメンテナンスとメリットについて記述していこう。
まず言える事は「使ってこそ」の畳だ。和室を歩く事、寝転ぶ事、座る事等々。それが一番のメンテナンスに繋がる。和室を歩く事で、足の裏の油分を吸ってツヤが出てくる。歩く事で風が通り、畳が呼吸できる。風通しと共に乾拭きも大事だ。ホコリに湿気を吸わせてしまうとそこにカビが生えやすくなる。
畳の張替えは使用頻度にもよるが5年で一度「畳表の裏返し」の相談が良い。畳表を裏返す事で日に焼けたイグサが新品のように感じられる。そして土台に凹みや傷みがある場合には早めの補修が大事だ。一度しっかりと処置をして裏返しをすれば、その後は長く使う事ができる。
畳のメリットについては吸音・吸湿・消臭性に優れている。またリラックス効果や子供の集中力にも効果が見られる。和室はなんとも良い事づくめではないか。
現在の建築方法には藁床は合わない場合が多いが、ご自身で納得するまで専門家、(今回は中山製畳店)に相談することをお勧めする。必ずやご自宅に合い、希望にそった和室を手に入れる事ができるだろう。

<高尾山　薬王院>
中山製畳店について最も大事かつあまり知られていないであろう情報として、高尾山薬王院の畳を創業間もなくから今も担っていることだ。本堂は172畳もの広さで他に広間も客殿もある。2年に1度の頻度で畳を張り替える。ここでは一般家庭で行われる「裏返し」はなされない。使用頻度が高いため傷みも多い。かつ薬王院では護摩焚きも頻繁に執り行われるのでススがつく。数年前に薬王院内で話し合いがあったそうだ。「表替えを3年に1度にして参拝客に失礼のない美しさを保てるのか、否これまでどおりに2年に1度の張替えがベストだ。」そう答えがでた。そこにも薬王院の自信とプライドを感じられる。中山さんはこれに畳職人としての自信とプライドを持って応えるのだ。古い木に黒々と書かれた「高尾山出入講講員之章」の名にかけて。



内陣と呼ばれる、僧侶が7～10人入る畳は更に使用頻度が高いため1年に1度の表替えをする。この際の畳ヘリは「紋ベリ」と呼ばれる紋の入ったヘリを使う。隣り合う紋が寸分違わずきちっと揃う美しさが際立つ。


<記者後記>
いかがだろう。和室、畳の魅力が少しでも伝わっただろうか。
高専通りの街路樹、マテバシイの緑が生い茂り散歩に出掛けるには良い気候となっている。
歩き疲れたら是非、中山製畳店の前にある畳のベンチに腰掛け、手触りも温もりも感じながら一休みしてはいかがだろう。

中山製畳店
八王子市椚田町513-14聖心ハイツ1F 地図はこちら
TEL　042-661-0154
fax　042-667-0088
Face bookページ